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毎年遭難者が出ている山

740 :本当にあった怖い名無し :2008/09/08(月) 10:26:25 ID:aMpAuZQj0
僕は登山が好きだ。連休が取れれば必ず登山に行くほどに。
僕には好きな山がある。標高はそれほど高くないけど、険しい道のりで毎年遭難者が出ている山だった。
道の整備が進んでいないから、登山家の中でも敬遠されがちな山だった。

僕は人が少ないその山を大いに気に入っていた。まるで僕だけのもののようだった。

ある休日のこと、僕はその山に登山に出かけた。鳥のさえずりと川の流れる音がすがすがしい。
しばらく歩いていると吊り橋がある。頂上に行くにはそこを通らなければならない。
つり橋に差し掛かったとき一人の男がいた。男の様子が変だ。
男は手すりの外に立って、下をただ見つめている。
僕はとっさに言った。
「危ないですよ!!」
男は気づいてこちらを向いた。
僕は悟った。男は飛び降り自殺をしようとしているのだ。
僕はさらに言った。
「あなたが死んだら、奥さんや娘さんはどうやって生活するんですか。自殺なんてやめてください」
そんなことを言ったと思う。
俺は男の家族なんて分からない。どこかの刑事ドラマで見たようなセリフを吐いただけだ。
男は僕のほうを見て、
「勇気が出ました」
そう言ったと思う。
僕は自殺をやめたと思った。良かったと思った。
そのとき、男はぱっと手を離した。男は飛び降りたのだ。
僕はすぐさま119を呼んだ。
山奥だったし、数十メートルもある谷底だ。男は助からなかった。

後で分かったことだが、男は保険金をかけて、事故に見せ掛け自殺したのだった。
俺は救急隊員に事のいきさつを説明した。当然保険金は下りなかった。後味が悪かった。
俺はそれ以来、遭難者を見ても見ないふりをしている。

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