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中古ソフト

199 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/07/10 22:40
俺が今でもRPGやんないのは理由があんだよ。
小学校2年の時。その頃はみんな知ってる通り、ファミコン全盛期。
当時うちでは金銭的な理由ではなく、親の教育方針みたいなもんで、
ファミコンのソフトはなかなか買ってもらえないものだったんだ。
誕生日とクリスマス、そしてばあちゃんが年に1回くらい買ってくれるくらい。

ちょうど、とある大作RPGの三作目が発売されて、1ヶ月くらいたった頃だったと思うんだけど。
親父と近所を散歩してたら、近所のスーパーの前で中古ソフトの路上販売をやってたんだ。
やっぱり目についたのは例のRPGソフト。
俺がどんな目をしてソレを見つめていたかは、今でも想像に難くない。まさに食い入るように見てたんだろうね。
すると親父が言った。「欲しいのあるのか?たまには買ってやるよ」と。
もう言葉にならないくらいうれしかったのを、今でも覚えている。
まぁ、後から考えると、親父が急に買ってくれた時点で、すでに何かがおかしかったのかもしれないんだけど。


201 名前:199 投稿日:03/07/10 22:44
家に帰ってさっそくやりたかったんだけど、我が家には厳しい掟が。ファミコンは毎週日曜日2時間まで。
くぅ、今日はまだ水曜の夕方・・・!やれねぇ。
しょうがない、俺は部屋で穴があくほどカセットと説明書を眺めてたよ。で、気づいた。
カセットの裏と説明書の最後のページに、『アキオ』って書いてあるのに。
まぁ、当時名前が書いてあるのは、そんなに不思議な事でもなかったから、
その時はそれほど気にもしなかったんだけど。
なにぶん中古ソフトだし。

翌日学校から帰ってきたんだ。うちのおかんは専業主婦だから、家にいないって事はめったにない。
なのに、その日帰ると誰もいなかった。
玄関には置手紙。
『タク(弟)とおばあちゃんのとこ(近所)にいってますね。5時には戻ります』
変な偶然が重なるもんである。が、その時はそんな風には考えない。
俺の頭は一気にゲームモードに突入。
千歳一隅のチャンス!時間はまだ2時過ぎ!今からだと3時間近くプレイできるじゃないか!


202 名前:199 投稿日:03/07/10 22:45
さっそくファミコンを準備、部屋にソフトを取りに行く。
昨日の夜、机の中に入れてたつもりだったが、『ソレ』は早くプレイしろといわんばかりに机の上に出ていた。
が、深く考えない。さっそくスイッチON。
真っ黒な画面。
俺はこのゲームのオープニングを、まだどこでも見たことがなかったから違和感はナシ。
そう言うもんだと受け止めたよ。
しばらく待つ。

・・・更に待つ。

何もつかない・・・。まじかよ!まさか壊れてんのか?
カセットを外し、息を吹き込む。そして慎重に本体に挿入、再び電源を・・・。
おもむろに音が出た。だけど、これってBGMか・・・?
何か、木琴だか鉄琴だかみたいな音が、同じテンポで流れるだけ。
まぁ、それでも、ゲームモードに入った俺は怪しまないんだけど。
タイトルも表示されないまま、いきなりセーブデータが表示される。
予想通り、主人公『アキオ』のデータだ。


203 名前:199 投稿日:03/07/10 22:46
さっそくデータを消して、新たに俺のデータを作ろうとした。
ただ、その時俺は気づいた。
セーブデータ作成を促す文章が、なんかおかしいんだ。

『ぼくとあそんでくれるのはだれ?』

なんだか変だぞ・・・。その時初めておかしいと思い始めた。
奇妙なBGMは延々と続いている。
怪しみながらもひとまず名前を入れる。『シンイチ(仮名)』と。
その瞬間。

『あははははははははははははは!シンイチ君!あははははははは・・・!』

静かな家の中。大音響のけたたましい子供の笑い声が、テレビから溢れた。
あまりの事に俺は頭が真っ白になり、気が遠のいた。
でもはっきり見たよ。
薄れる意識の中、黒い画面に同い年くらいの少年の顔が映っているのを・・・。満面の笑顔で。


204 名前:199 投稿日:03/07/10 22:47
夕方。俺は、おかんに起こされて気が付いた。
ファミコンが出しっぱなしだったため、隠れてやろうとしてた事がバレてカンカンだった。
怒られながら横目で見たテレビ画面には、もう何も映ってはいなかった。
もうこんなソフトは近くに置いときたくなかった。一刻も早く捨てたかった。
だけど、せっかく親父が買ってくれたんだ・・・。捨てるのも何か親父に悪い気がしてできなかった。
結局、そのソフトは、俺の部屋の押し入れ奥深くの俺の道具入れにしまうことにした。

翌日。学校から戻ったらまたおかんがいなかった。
でも、玄関に置手紙はナシ。ということは、タクが家に残ってるってことだ。
ランドセルを置いてリビングに行った。
タクがテレビの方を向いて座ってる。その前にはファミコンが。
そして隠したはずのあのソフトが。


206 名前:199 投稿日:03/07/10 22:51
次の瞬間、テレビのモニタが目に入った。
『アキオ』がこっちを見て大声で笑った。
こっちを振り向いたタクも、アキオと同じ顔で笑ってた。
二つの笑顔と声がが頭で渦巻き、また俺の気は遠のいていった。
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